妄想
六月九日朝、夢を見た。父の夢だ。そうだ、今日は父の命日だった。あの日の午後、危篤の報を受けて駆けつけた病室で、父にはまだ息があった。次々に家族が駆けつけ、みんなが揃ったのを見届けるようにして父は逝った。夢に出てくる誰もが猫の顔をしていた。…
招かれて向かう道で猫と目が会った。私と猫、どちらも目をそらさない。そのまましばらく時間が止まった。どれくらい経ったか、また時間が動き出し、猫は少し後ずさりした。猫が動いたから時間が進み出したのかもしれない。私はちらりと自分の足元を確認し、…
たぶん僕の前世は猫で、きっと野良猫で、飼い猫に憧れていた。 飼い猫になりたくて仕方なかった。ぎゅっと抱きしめられたかった。 僕を抱きしめてくれるニンゲンがいつかきっと現れると思って、ニンゲンに近づいていってた。どこの飼い猫よりも愛想が良くて…